大学受験が終わって、必ずと言って良いほど生徒から耳にするこの言葉。
「もっと早くからやっておけばよかった…」
大学受験がやってくるということが分かっていながら、なぜみなさん同じような事態になってしまうのでしょうか。本人の計画性やモチベーションのせいにしてしまうのは簡単ですが、どうもその原因は高校受験の制度と高校生の情報不足にあるように思います。
錯覚を起こさせやすい高校受験制度
中学までは義務教育なので、高校受験はほとんどの人が経験していると思います。
東京都の制度を前提として説明しますが、端的に言うと高校受験では内申点(学校の成績)がかなり重要になります。
私立高校の単願推薦・併願優遇入試では実質ほぼ内申点だけで合否が決まることがほとんどであり、都立高校では推薦入試はもちろん、一般入試でも内申点が点数化されて本番のテストの点数と合算で合否が判定されます。どれだけ入試対策の勉強を頑張っていても、最後は内申点で泣いたという中学生は少なくありません。
それに対して大学受験では、大多数の生徒にとって高校の評定平均(学校の成績の3年間の平均)は一切入試には関係しません。指定校推薦や公募推薦・AO入試を使う生徒にとってはもちろん学校の成績は影響しますが、大学受験全体からするとこれらの入試は少数なのです(そもそも募集枠が少ない)。
この両制度の違いによって、高校受験を終えたばかりでのびのびしたい高校生が、とりあえず中学までと同じように学校の勉強をそこそこ頑張っていれば大丈夫…と思ってしまっているように感じます。もちろん学校の勉強も大切ですが、残念ながらほとんどの一般的なレベルの高校の場合、学校の勉強だけでは大学受験の基礎を学ぶ上で不十分であり、学校で習った内容も十分に定着しないまま高3を迎えてしまう受験生が多いのが現状です。
高校生の正確な情報不足
さらにそこに追い討ちをかけるのが、受験生自身が複雑な大学受験の仕組みや入試科目・具体的にどんな勉強をすれば良いかを把握・理解できていないケースが多いことです。
大学受験は、文系理系はもちろん、進む学部の系統やそれぞれの大学・学部、また英検利用入試などで全く入試科目が異なってきます。
科目数自体は都立高校入試の5教科より少ないことがほとんどですが、一般的な高校受験の勉強よりも比べ物にならないような勉強量をかけないと、受験の基礎の習得すら終わらないような内容になっているのが大学受験の入試科目です。
英語を例にとって説明すると、大学受験英語ができるようになるための一般的な学習コースは以下のような形です。
英文法 | 英文解釈 | 長文読解 | パラグラフリーディング リーズニング | 入試問題演習 個別形式対策 | |||
単語 | 熟語 | 語彙・文法 総復習 | |||||
6ヶ月 | 6ヶ月 | 6ヶ月 | 3ヶ月 | 3ヶ月 |
塾生には実際の入試問題や問題集を見せながら説明して理解・納得してもらっていますが、これだけでもなんとなく1年間の勉強ではとても間に合わないことが理解していただけると思います。
こういった具体的に大学受験レベルの勉強ができるようになるまでのステップが、受験生自身があまり理解できていない、というより知らないケースが多いため、具体的なプランを思い描くことができず、日常の忙しさに流され受験勉強のスタートが遅れてしまっている生徒が多いのが現状です。
1日何時間もやる必要はない、確実な基本の定着をコツコツと
まずは自分の進路・入試科目をある程度確定させましょう。上記の説明の通り、大学受験の勉強は基本事項の学習から数えると2年はかかると思ってください。入試に必要な科目(ほとんどの人にとって3科目)がはっきりしていれば、入試科目に絞って学校の勉強以上に力を入れて、早期から対策をしていくことができます。その入試科目だけは、学校のテストだけでなくどんな問題でも解ける実力を養っていくことが非常に重要です。
ただ受験勉強とは言っても、高2の4月から1日何時間も頑張り続ける必要はありません。受験に必要な基本事項を確実に理解・定着させていくために、コツコツ頑張っていけば良いだけです。部活などで忙しい平日は、5分〜10分だけでも見直しの復習を、ある程度まとまって時間が取れる日に少し頑張って学習を。日曜日は月に一度気晴らしに遊びに行こう。それで大丈夫です。充実した高校生活と計画的な受験勉強を両立させることは十分可能です。
自分だけであれこれ考えて実行していくのは少し難しいし、どうしたら良いかわからない部分もあるかもしれませんが、学校の先生や塾の先生にも相談してみて、後悔のない大学受験にできるよう頑張ってください。